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しかし、最近になってこの首振り説では説明できない事実がいくつか明らかにされている。例えば、大阪大学の柳田敏雄らは遊離したアクチンフィラメントを用いた実験で、ATP1分子が分解されるときにアクチンフイラメントは首振り説から期待される距離の10倍にあたる60〜70nm滑走することを見い出している(柳田,1989)。
荷重が大きいときにはAT分解の15〜20kBTの自由エネルギーを使ってそのまま動くが、荷重がないときにはエネルギーを小出しにして多数回のステップを動くと考えられている。熱ゆらぎと同程度の自由エネルギーを熱ゆらぎと区別しながら有効に使うメカニズムを備えていると思われる。

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図4−19 ミオシンの滑りの仕組み(香川,1990)

上:首振り説
下:ミオシン頭部はアクチンフィラメントに垂直(エネルギーを小出しにし、首振り運動はしない)

 

 

 

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